慢性の肩関節前方不安定症の治療に対するLatarget手術の治療成績
職場で肩関節脱臼に対してLatarjet手術が行われることが多く、Latarjet手術に対する知識がなかったので、今回の論文を読んでみました。
The American Journal of Sports Medicine 2020:48(1):27-32
タイトル
Outcomes of the Latarjet Procedure for the Treatment of Chronic Anterior Shoulder Instability
Patients with prior Arthroscopic Bankart Repair Versus Primary Cases
「慢性の肩関節前方不安定症の治療に対するラタジェ手術の治療成績」
~鏡視下バンカート修復術歴のある患者と一次手術症例の比較~
Jean-David Werthel, MD, Vincent Sabatier, MD, et al.
Background
鏡視下バンカート修復術の失敗後に行われたラタジェ手術と一次手術として行われたラタジェ手術とで術後結果が異なるかどうかは不明である。
Purpose
失敗した鏡視下バンカート修復後の再手術として行ったラタジェ手術と一次性ラタジェ手術の術後成績を比較する。
Study Design
Methods
再現性のある肩関節前方不安定症に対してラタジェ手術を受けた全患者を対象に、多施設レトロスペクティブ比較ケースコホート解析を実施した。
患者を失敗した鏡視下バンカート修復術後にラタジェ手術を行った群(グループ1)と一次性のラタジェ手術を行った群(グループ2)の2群に分けた。
アウトカムの指標には、不安定性の再発、再発率、合併症、痛み、Walch-Duplayスコアと肩関単純検査を含む。
Results
合計308人の患者がこの研究に参加したが、72人の追跡調査が出来ず、236人の患者が分析対象となった。
平均追跡期間は3.4±0.8年
グループ1が20人、グループ2が216人であった。
不安定性の再発率(グループ1が5.0% 対 グループ2が2.3% P=.5)と
再手術(グループ1が0% 対 グループ2が6.5% P=.3)は
同程度だったにも関わらず、
グループ1では
疼痛スコア(2.56±2.7 対 1.2±1.7 P.0.1)と
患者が報告するアウトカム
(Walch-Duplay:52±25.1 対 72.2±25.0 P=.0007、Simple Shoulder Test:9.3±2.4 対 10.7±1.9 P=.001)が
一次性ラタジェ手術を受けた群と比較して有意に悪化した。
Conclusion
機能的スコアと疼痛スコアは失敗した鏡視下バンカート修復術後に行ったラタジェ手術を受けた患者では、一次性ラタジェ手術を受けた患者と比較して有意に悪化する。
失敗したバンカート修復術後のラタジェ手術は、一次性ラタジェ手術と同様の結果を出すことが出来ない。
感想
多くの報告で、再手術の場合は治療成績が落ちるといわれているので予想通りかなというのが最初の感想です。
多くの病院で行われている鏡視下のバンカート修復術は、再脱臼を除外した場合は合併症の発生率が非常に低いといわれています。
この論文の報告では鏡視下手術の再脱臼率は28.4%、
対して一次性ラタジェ手術の再脱臼率は1~11.6%と報告されていました。
この論文を読んでいて思ったことは、
まずグループの人数差がかなり大きいことからもう少しグループ1の人数を増やした場合は結果が大きくことなった可能性があること
あとは多施設の患者比較であり、術者がすべて同じではないので手術の技量による差もあるのではないかと思いました。
ですが、再脱臼後に行ったラタジェ手術のような大きな手術であっても機能的スコアが低下することから、
より丁寧で繊細なリハビリが必要な可能性があるし、患者の主観的なアンケートを積極的に行い、どの点が不足しているのかを詳細にする必要があると思いました。
皆さんはこの論文を読んでどのように思いましたか?
また、肩関節脱臼の再手術患者を担当した場合、どのような点に意識して介入していますか?
ぜひ教えてください。
コメントお待ちしています。